(1)ストラクチャー・アクセサリー類の製作


(A) 煉瓦造りのストラクチャーの製作 その2

軽井沢機関庫



機関庫内部から

 1888年(明治21年)に直江津・軽井沢間に官設鉄道が開業して軽井沢駅が新設されましたが、この時点では碓氷峠の路線が未定で駅自体の位置も変更になる可能性が有ったため、仮設の駅や仮の機関庫で営業を開始しました。1891年(明治24年)には碓氷峠をアブト式により中尾川沿いのルートで越えることが決定され直ちに着工、軽井沢駅の位置も確定しました。そこで同年に転車台を設置、1893年(明治26年)、碓氷峠がアブト式で開通した年に給水塔と共に煉瓦造りの立派な3線機関庫が新設されました。
 当時信越線でも使用されたテンダー機関車である8100型や8150型などは全長15m足らずで、その2両分という計算かどうか定かではありませんが、この機関庫の全長は約30m、幅は約14mで当時としては比較的大型の機関庫であったのではないかと思います。写真によると、この機関庫は設置当初は張り出した作業室部分を持っていましたが、戦前には取り払われたようです。また機関車の入出庫口のある両正面の煉瓦積みも早い時点で取り壊され、その開口部の上部にはトタン板作りのような雨除けが取付けられました。明治中期の機関車用に作られた入出庫口は、昭和10年代に入ってからのD50型やD51型など全幅が50pほど広い機関車の入線には幅がタイトだったのかもしれません。この庫は電化後も残存していましたが1969年(昭和44年)に入換用のC12が廃止された後、取り壊されてしまいました。
 この煉瓦造りの機関庫をレイアウト上に設置したいとは永年思っていたものの、煉瓦造りであるために、市販品には煉瓦のスケールや表現方法について満足のできるパーツ等がなく先延ばしになっていました。ところが2015年にクラシックストーリーの故山川社長が部材の製作を引き受けてくださることになったので、基本的なコンセプトを下記の通り決定して私の兄が設計に入りました。

基本的コンセプト
@ 1/80スケール (13mmゲージ) のやや大きめのシーナリー・ストラクチャー付き組み立て式レイアウトにおけるストラクチャーの1つであり,小さなシーナリーセクションにおけるストラクチャー,あるいは建築模型のような精密性や構造の正確性は求めない。
A 目指している機関庫は,碓氷線が開業した1893年(明治26年) に,元々古典機関車用に作られた軽井沢機関庫 (3線) の実物の写真資料,および,細部についてはほぼ同時期に造られた横川機関庫 (2線) の写真資料と設計図資料をベースに,機関庫の全体のデザインや大きさを決定し,東西妻面の車両入出庫開口部は,近代蒸機 (D51,D50,C12) が入れる大きさとするという折衷案。
B 東西妻面の車両入出庫開口部の寸法は,糸魚川機関庫・和田山機関庫などの寸法を採用し,これをそのままスケールダウンした設計となっているため,実際の運転で支障が起きないよう,工作には細心の注意が必要。
C 見た目のバランスや雰囲気が実感的かどうかという点には,寸法に加え,色彩,ウェザーリング等を最大限に活用。 (精密さには頼らない)
D 機関庫内のピット・線路等を含めた路盤部分はレイアウト上に別途設置する。
E 組み立て式レイアウトという特性から,運転時にレイアウト上に設置し,運搬・収納時は取り外せる方式とする。





2008年9月 糸魚川機関庫


2008年9月 糸魚川機関庫正面





機関庫全景

 山川社長はこちらから手渡した設計図やコンセプト等に基づき、レーザーカット用の設計図を引き、質感や色合いが良いため煉瓦模様の素材としてクラシックストーリーの煉瓦造り製品でも使用されていた1o厚のバルカナイズドファイバーを使って、試作品を製作する段階まで来ました。ところがこのような大型のストラクチャーでは、芯材として用いたMDF材にこの素材を木工用の接着剤で貼り付けると、乾燥した段階で修正不能な大きな反りを生ずることが判明しました。他に適当な材料がその時点で見つからない、ということで計画が頓挫してしまいました。





西面模型化図面


南面模型化図面





機関庫の最終組立前の状態

 このままこの図面を無駄にしたくないと思っていたところ、当会会員のNIが引き続き挑戦してくれることになり、2017年に山川社長から図面とそれまでに試作品が完成していた屋根部分の小屋組材を受け取ることになりました。NIは使用するレーザーカッターのサイズに合わせてカットするラインを変え、煉瓦のサイズを最終的に1o×1.5o×3oとして設計図を引き直した上、数種の材質の板でレーザーカットする素材をテストしてくれました。その結果、煉瓦模様を入れる側壁等の素材は1o厚のMDF材を使用し、中心部に2.5oのMDFを挟み、裏側にもカットした1oのMDFを貼ることにより、木工ボンドで接着しても反りが出ない側壁が出来ることが分かりました。煉瓦積側壁の厚さを計4.5oとすることに決定、最終図面を作成し、レーザーカッターで煉瓦模様の各種部材、石材や窓枠とアクリル板の窓ガラスなど、すべての部材をカットしてくれました。部材だけでも65種類に上り、大変なご苦労をおかけしましたが、もしこれが無ければ満足のいくスケールの煉瓦積の機関庫は決して完成しませんでした。
 レーザーカットされた煉瓦模様の素材は、組立前に全て前回ご説明した給水塔と同様の方法で着色し、煉瓦積みの角になる部分は素材の厚みを見せないため、MDF材の端を45度にやすり落として突き合わせ、木工ボンドで接着しました。他の石材部材も着色、扉や窓枠も着色してからガラスを挟み、側壁や正面の入出庫口のある壁面ごとに組上げて行きました。箱状に正確に組立てるためと、機関庫全体を取外し式にするため、両側壁部の下端及び作業室部分には2o厚の航空ベニヤを接着して強度を増し、これをベースに全体を木工ボンドで組上げてから四隅の角部分のピラーも仕上げました。





機関庫内側


機関庫の小屋組





機関庫北面

 前述のように屋根部の小屋組材と煙出し部は、山川さんからMDF材をカットし組立てられた状態で受け取っていたので、これは艶消しの黒で吹付塗装し、この構造材の上にノースイースタン製の羽目板を貼り、その上にいさみやの0.5o厚の方眼紙を2枚貼り合わせて野地板のようにしてから、サカツウ製の屋根瓦を貼り付けました。末期の機関庫の屋根は多くがスレート瓦やトタン板になっていたようですが、落成時は日本瓦であったと思われ、作者の好みでもありますので屋根瓦仕様としました。屋根全体には黒のスエード調塗料を吹き付け、ウェザーリングを施しました。煙抜きの煙突はエコーモデルの製品を使用し、下部の排煙用のダクトは安達製作所のC55流改型のドームパーツを使用してみました。
 この機関庫は模型としては比較的大きく存在感がありますが、給水塔などと同じく近づいてよく見ると煉瓦が一つずつ綺麗に表現され、写真を撮って拡大してみるとまさに実物のイメージがそのまま表現されているようで、満足のできる仕上がりとなりました。

(B) 駅ホーム部のアクセサリーの取付

渡線(とせん)の取付と渡線車(とせんしゃ)の製作



渡線と渡線車

 まだ宅配便のようなサービスが無く、一般個人の荷物の運送を鉄道が担っていたころ、上り線と下り線のホームが分かれている大規模な駅では大量の荷物を運搬するため、荷物を運ぶ運搬車ごとリフトで持ち上げ、線路を跨いで両ホーム間を移動するテルファーと呼ばれる大きな設備が有りました。一方軽井沢駅の様な中規模の駅には、渡線という本線を直角に横切って行く線路上を、渡線車と呼ばれる台車が荷物を載せたリアカー等の運搬車を載せて、本線を渡って両ホーム間を運搬する設備が有りました。この設備は通常荷物車が停車する辺りに設置されていましたが、軽井沢駅にもホームの横川方から2両目あたりに設置されており、この小さい設備を模型化された例が記憶になかったこともあり、製作してみることにしました。



渡線車

 渡線車は各駅でホームの高さなどの現物に合わせで作ったのかもしれませんが、記述した資料が少なく寸法等も不明だったので、数少ない写真から推定してそれらしく作りました。ゲージは本線より狭い12oとし、写真のようにレールを本線と直角に配置しました。実物は本線のレール上を渡線車のフランジが通るので、渡線のレール面上は本線より少し高くなっているようですが、ケーディーカプラーのトリップピンの通過に支障を来す恐れもあるので同一面としました。渡線車自身の上面の寸法は2000ox1300oとの記述が有ったので、車輪等の厚みを考慮して26.5ox17.4oとし、台車はアングル材を組立て、Nゲージ用の5.7oスポーク車輪の車軸をパイプで繋いで12o用として使用しました。本体は黄色で塗装し、上面にはエコーの警戒色デカールを貼ってあります。また渡線車を不使用時に収納しておく凹みを、実物通り下りホームに作りました。目立たない設備で殆ど自己満足ではありますが、アクセントとしては面白いものが有ります。

列車給水栓の取付



給水栓



2023年2月 小倉駅給水栓

 国鉄時代、長距離列車が暫く停車する中規模以上の駅では、列車で乗客が使用する水を補給するため、各車両がホームに停車する位置に給水栓が設置してありました。軽井沢駅は上野から当時でも3〜4時間の距離のため欠水しなかったようで、下り線には給水栓は有りませんでしたが、上り列車は金沢や福井、或いは遠路大阪から北陸線経由で来る列車もあり、上り線に給水栓が設置してありました。
 この給水栓をレイアウト上で表現したく製品を探していたところ、幸いにもLazyJack社から「客車給水設備」としてコンクリート製の枡と蓋が発売されていましたので、これを利用して上り線に10個設置し、ホースは0.8mm径の半田線を使用しました。これだけで大きな駅の雰囲気が出てくるのは不思議です。

次回は新たな車両などをご紹介します。

(2025年12月 M.F)