(1)増設部分の製作

その3 転車台の製作及び設置 (1)

6.転車台の製作及び設置

 駅部分を製作した時点で、今回増設した機関区や転車台部分をいずれ製作する計画はありましたが、 製作に当たってのネックの一つは転車台にありました。 日本型の転車台についてはその機能や外観に満足できる製品は市場になく、 技術的にも自作できる状況にもなかったので先延ばしにしていたところ、 幸いにも2004年に珊瑚模型店より機能・外観とも満足できる製品が発売されました。 キットの発売時点では転車台部分を含んだ具体的な増設計画はまだ出来ていませんでしたが、 直ぐに軽井沢駅に設置されていた下路式転車台の13mm用キットを購入し、取り敢えず転車台を組立てることにしました。 この転車台は桁上の線路長が270mmありますので、国鉄の大型蒸機でも使用可能で、 このレイアウトで使用するD50やD51にも丁度良い大きさです。
 転車台のキットを組むのは勿論初めてで、部品も200点以上あり、 また組立説明書も難解なためその構造の把握や調整に手間取りましたが、何とか完成に至りましたので、 組立・設置に際してのポイント等を記したいと思います。

 このキットは全体の外観の良さもさることながら、 自動制御システムを導入すると外観を犠牲にすることなく予め設定した位置で桁を正確に停止できること、 ギミック的な鎖錠装置が可動することなどファンの心を捉えた良く考えられた製品です。



1) 主桁の製作


 組立は桁のフレーム部と側桁部から始めました。フレームはキット付属のアルミ製治具を使って、長手方向の角線の縦梁に横方向の桁内板等を半田付けしますが、直角や水平方向に歪みなく正確に組立てることが必要です。組立に当たってはアルミ製組立治具の剛性が低いので、これ自体の歪みにも注意します。フレーム本体に歪みが有ると桁の両端部分が対称にならず、設置後転車台を回転させたときに引込線などとの接続に不具合を生じることになります。次に側桁外側に多数の縦梁やエッチングでリベットが表現された補強板を半田付けし、側桁上部と下部にもそれぞれリベット付の帯板をT字状に取付けます。キットには側桁の内側の縦梁やリベット板等は含まれていませんが、少しディテールが寂しいので別売の縦梁のみ取付けました。フレーム部分と側桁それぞれの組立が終わったら桁内板を側桁に半田付けし、その他の小物も取付け、桁は完成です。この時点で再度桁全体に捻じれや歪みが無いか確認しておきます。桁上の線路は、キットではシノハラの13mmのフレキシブルレールが付属していますが、枕木が転車台用としては短いので、同社が13mmのフレキシブルレールの販売初期に使っていた長い枕木に交換しました。ここまで出来ましたら桁内部の施錠装置のリンク機能も取付け、問題なく軽く作動するか確認します。特に施錠装置のベロは、施錠時(引出される時)はリンク機能で確実に作動しますが、解錠して引込まれる時はコイルばねの力のみなのでスムースに引込まれるように調整します。(引込まれないまま回転すると大惨事になります。)
 櫓は7つのロストパーツをやすり仕上げした後半田で歪みなく組上げ、上部ソケット等を付け側桁に半田付けします。当初は運搬や収納時の容易さを考え、高さを低くするため櫓を取外し式にしようかとも思いましたが、組立・解体を繰り返すうちに破損することも考えられたため、全て半田で固定することにしました。
 転車台全ての組立が完成し調整した後、一度解体して桁には朱色4号を吹付け塗装しました。

2) 動力装置の組立


 次にピットの下に付く、桁の回転部分と鎖錠装置に関係する動力装置を説明書の通り組立てます。各回転軸の軸受部分にはベアリングが入っておりスムースですが、ここでも歪みの無いように組立てます。桁の回転部分の伝動はほぼギアーのみで比較的簡単ですが、施錠装置についてはリンクの構造をよく理解してから組立に掛かります。リンク機構はビス止めする部分が有り、組立後はドライバーが入らなくなることも有るため十分締め付けておきます。全てのリンク機構がストレスなく動くように調整し、組み上がった時点でそれぞれのモーターを作動させて桁の動力シャフト及び鎖錠装置のリンクが問題なく動くかテストをしておきます。中心の動力シャフトは自動運転用のエンコーダーを取り付けるため、別売の長いものに取り替えておきました。 動作に問題なければ2個のモーターや桁上のレールへのフィーダー、施錠装置用のモーターのオンオフのためのマイクロスイッチ等への配線を半田付します。動力装置が組み上がりましたらピットの下部にスペーサーを介して4本のビスで取り付けます。

3) ピットの製作とボードへの取付


 ピットは0.6mm厚位の真鍮板を一体プレスしたもので、上路式、下路式ともに同じものが使われており、下路式の場合はピットの底をかさ上げするため、ピットの中心部に4個の筒形のスペーサーを置き、その上に直径220mm程の皿状にプレスした薄い真鍮板を底板としてビス止めするようになっています。ピットの上部の縁には、転車台をレイアウトのボード上に設置するときにピットを落とし込んで路盤に載るように、プレス加工された幅10mm程のフランジがついています。このフランジは0.6mmの厚板プレスで出来ているので、フランジ部への折り曲げ箇所が丸くなっていますので、ピットはレイアウトのボードに取付ける前に少し形状を整えました。ピット上部はコンクリートのきっちりした角を表現し、コンクリート部分が地面より少し浮き出して見えるようにするため、フランジ部上辺の内縁に沿って幅5mm厚さ0.6mm程の厚紙を貼り付け、厚紙と丸くなったプレス板の隙間部分にエポキシパテを盛り、乾燥後やすりで仕上げました。また下路式用にピット上にビス止めした薄い真鍮の底板も、その縁の部分の板厚でピット本体との間に段差ができますので、そこもパテで埋めておきました。此処まで出来ましたらピット表面をコンクリート調の塗料で吹付塗装をしました。
 桁や牽引車の乗るレール用のホワイトメタル製の短い枕木は茶染した後ピットにゴム系接着剤で固定し、その上に長さを正確に切った着色済みのレールを枕木上に表現された犬釘で固定しました。このレールは各枕木に密着していないと、回転時に桁が大きく揺れる原因になりますので注意が必要です。  前述の通り転車台の載るボードはピットの大きさに穴を開けてもらいましたので、ここに設置するべく周辺を調整します。ボード上には2mmのコルク板が貼ってあり、そのままピットのフランジ部分を乗せるとピットの板厚の0.6mm程段差ができてしまいますので、フランジ部分のみコルク板をはがし、厚紙で1.4mm程同部分をかさ上げして、フランジ上面とコルク板上面を面一になるように調整しました。うまく収まったところでボードとピットをゴム系接着剤で固定しました。
 転車台の自動制御システム用のエンコーダーをピット下に取付けた動力装置の下部に設置すると、30mm高の側枠下面から更に50mm弱出っ張りますので、レイアウト設置時はその部分のテーブルの間隔を開け、落とし込むことしました。

4) 牽引車の組立


 牽引車の上回りは一枚板のエッチング板を箱状に組み、屋根や窓枠等の部品を半田付けするのみで簡単に完成します。台枠部分はロストワックスで出来ておりこれに先輪や動輪、桁への取付金具を取り付けます。上回りと台枠部分は固定せず嵌め込むのみで完成しますが、実物は桁の回転時には操作のため牽引車の扉はほぼ開いているので、そのようにした方が面白かったと思います。上回りは灰緑色、台枠部分は艶消しの黒を吹き、完成後作業員を乗せました。


 次回では転車台の自動制御システムや電気配線、接続線路や鎖錠装置の設置などについてご説明する予定です。

(2020年7月 M.F)