(1)ストラクチャー・アクセサリー類の製作


(A) 煉瓦造りのストラクチャーの製作 その1

 真夏のむせ返るような暑さの横川駅を出て、4台のED42に牽かれ、自転車のような速度で碓氷の峠を登ってきた準急列車にも、最後の26号トンネルを抜けると車内に涼風が吹き込み、視界も一気に開けて噴煙の見える浅間山を遠くに見て、高原に来たことを実感したものでした。アブト区間を抜け矢ヶ崎信号場を過ぎてからED42に牽かれた上り列車とすれ違い、軽井沢駅構内が近づいてくると左側に大きな煉瓦造りの機関庫が見えてきました。さらに進みホームが近づくと煉瓦造りの円形の倉庫や給水塔が目に入ります。これらの煉瓦造りの建造物群は、アブト式の機関車と相まって、アブト時代の軽井沢駅の独特の雰囲気を醸し出すことに欠かせない存在でした。

給水塔



給水塔 1975年6月

 以前にも書きましたように、軽井沢駅には長野方面用の蒸気機関車及び入換機関車のために煉瓦造りの給水塔があり、1969年(昭和44年)の入換蒸機廃止後も筆者が訪れた1975年(昭和50年)には未だ残存していました。この給水塔は碓氷線が未電化で開通して軽井沢駅の場所が確定した1893年(明治26年)に、機関庫と同時に造られたもので、当時は上部の鉄製のタンク部は一段で、後に2段となって容量が増加したようです。
 このレイアウトでは、以前は珊瑚模型店製の煉瓦造りの古典型給水塔のキットを兄が組立て、この給水塔の代用として使用していましたが、個々の煉瓦のサイズがスケールよりもかなり大きく、また全体の形態も軽井沢駅の給水塔の独特の形態と異なっていたため、いずれはスケールに近いものを造りたいと思っていました。2015年に機関区部分のボードを製作して本来の給水塔の設置場所が確定し、スケールの給水塔の製作をしようかと考えていたところ、近年レーザーカットや3Dプリントの研究・実践にいそしむ会員のNIが、ホーム上屋のカットに引き続き、煉瓦模様のレーザーカット及びタンク部や屋根部のカットを、同じく軽井沢駅構内にあった円形煉瓦倉庫と共に引き受けてくれることになり一気に話が進みました。


NIから受け取った給水塔のキットの一部

 明治期に製作された円形煉瓦倉庫の直径が5mであったとの記述から、模型の直径を60oとして、写真から大まかな寸法を割り出して設計図を方眼紙に描き、煉瓦はスケールサイズでイギリス積みとすることにして、NIにカットを依頼しました。NIは煉瓦のサイズや積み方について研究して図面を作成、いくつかの素材で試作後、カットする素材として煉瓦部は円形にすることを考慮して1o厚のボール紙、鉄製のタンク部、屋根部と扉等は0.5o厚のバルカナイズドファイバーを使用して、それぞれ煉瓦模様のパーツやリベットの位置等を刻印し、キットのような状態で手渡してくれました。
 造り方としてはまず煉瓦の目地を表現するために、タミヤのアクリル塗料のフラットベースを、目地部を中心に刷毛で塗り、乾燥し白色になってから煉瓦上に残ったものを落とします。煉瓦部分はJR東日本で販売した東京駅高架橋の赤煉瓦を顔料とした煉瓦色のアクリル絵の具を、目地に入らないように綿棒で表面のみドライブラシの様に塗って行きました。ボール紙を煉瓦模様にカットしたところは表面がかなり剥がれやすいので、十分注意して進める必要がありました。塗料が十分乾いたところで全体に霧吹きで湿らしてボール紙を軟らかく曲げやすくしてから、直径が適当なしっかりした芯に慎重に巻きつけ、乾燥中に煉瓦模様がはがれないように外側にクッキングシートを巻いて輪ゴムで止めて丸めました。一昼夜経って完全に乾いた段階で輪ゴムを外すと綺麗に丸くなっていましたので、煉瓦色塗料と目地に入れたフラットベースを固定する必要もあり、艶消しのクリアーを吹いておきました。また煉瓦模様の縁の部分は剥がれを防ぎ強度を増すために、ボール紙の裁断面に瞬間接着剤を浸み込ませておきました。
 上部の鉄製タンク部は、バルカナイズドファイバーの裏側にはリベットの位置を凹ませたガイドが付けられていましたので、このガイドを裏側からケガキ針で押出して千個近くのリベットを表現しました。リベット打ちが済んだファイバーは、一旦水に浸して柔らかくし、これも適当な芯棒を中心にかなりきつめに輪ゴムで固定しました。バルカナイズドファイバーは水を含んで柔らかくした後、変形させて一旦固まると修正が難しくなるので、特に慎重に作業する必要がありました。これも完全に乾燥してから芯を外すと綺麗に丸まって固まっていました。これは艶消しの黒色を吹付塗装しました。





給水塔


給水塔煉瓦部




煉瓦の拡大写真

 煉瓦部上部の石材の土台はやはりNIが用意してくれた石膏で表現された部品を着色して使い、屋根部と扉部は同様にバルカナイズドファイバーで表現されたものを濃緑色に塗装しました。梯子も同ファイバーに穴を開けた左右の板に0.4oの真鍮線を通して表現しました。屋根上のハッチや揚水管のバルブ等は以前の珊瑚製の給水塔から移設しました。スポートはエコーモデルの製品です。
 全ての部材を瞬間接着剤で組上げて揚水管やスポートを取り付け、少しウェザーリングを施して完成としました。完成品を眺めると実物の雰囲気を上手く表現できたようで、煉瓦部はそれぞれの煉瓦がスケールでカットされているため、従来の模型と違い少し離れて見ると実物同様煉瓦模様の判別が難しい位ですが、近寄るとまるで本物のように煉瓦のエッジが効いて良い雰囲気となりました。模型で煉瓦の大きさをスケールで表現することについては賛否あるようですが、私はスケールで表現したことは正解だったと思います。

円形煉瓦倉庫

 この円形倉庫は碓氷峠のアブト式に使用する蒸気機関車用に造られた給水塔が、蒸機廃止の1921年(大正10年)以降にタンク部を取り外して倉庫にした物だそうで、新幹線の着工直前まで残っていましたので、ご記憶の方も多いと思います。
 基本的な造りは上記の給水塔の煉瓦部分と同じですので特に追加してご説明することはありませんが、実物は末期時には扉や窓枠は黄色に塗られていましたが、こちらも濃緑色に塗装しました。この煉瓦倉庫を設置するために、従来設置していた石炭置場と砂置場は中軽井沢方向に少し移動しました。





1990年代まで残っていた円形煉瓦倉庫


円形煉瓦倉庫


次回は煉瓦造りの機関庫やその他のアクセサリーについてご紹介します。

(2025年11月 M.F)