(1)増設部分の製作
その1 台枠ボードの設計・製作
2004年から2005年にかけて13mmゲージ組立式シーナリ―付レイアウトの製作記を当ホームページに掲載しましたが、
その後軽井沢駅の南側に配置されていた機関庫や転車台等を設置するためのボードを増設し、
既存の駅ホームには上屋を設置、畑には農作物等の作付けも進みました。
また懸案となっていたアブト式の電気機関車や本線の蒸気機関車の増備も進みましたので改めてご案内したいと思います。
2002年夏のJAMコンベンションに出展して以降は年2回のクラブの運転会で楽しんでいましたが、
2015年末及び2017年3月に池袋の東京芸術劇場で開催された「鉄道模型芸術祭」に参加させていただきましたので、
ご覧になられた方もおられるかと思います。基本的な製作方法は既存の部分と同じですが、
何かご参考になることが有れば幸いです。
(1) 増設部分の製作
このレイアウトは信越線が電化され碓氷越えもアブト式から粘着式に変更された昭和38年前後の軽井沢駅を
中心としたエンドレスですが、2005年に掲載した製作記11回目の「今後の課題」に書きましたように、
非電化の時代には長野側から来て碓氷峠を前に折返す蒸機のために、
駅の南側に明治中期に造られたレンガ造りの3線の機関庫や給水塔、給炭台、転車台等が有りました。
レイアウトの景観上、また運転上も大変興味のある部分なのですが、
この13mmのレイアウトは当初運転会時にはクラブの16番レイアウトの内側に設置していたため、
スペースの制約もあり、増設部分は未製作のままとなっていました。
その後運転会場も大きなスペースが取れるようになったため両レイアウトを別々に設置することになり、
上記の機関庫や転車台等のボードの増設を具体化するため、ボードの構造や線路配置などの大まかな設計を2010年頃から始めました。
珊瑚模型店から素晴らしい転車台のキットが発売されたことも増設の大きな動機となりました。
2014年の初めに定年退職したことから自由になる時間が大幅に増えたので、詳細な設計をして製作に取り掛かることとしました。
増設部分のボードの幅は基本的に300mm、転車台が載るボードのみ450mmとなっています。

1. 増設部分の台枠ボードの設計
以前軽井沢駅部分を製作した時に将来の機関区や転車台部分を駅ボードの南側(外側)に接して増設することを考え、
駅のボードから4本の接続用の線路を用意しておきました。
しかしながらその時点では増設部分のボードとの接続方法について詳細な検討もしないまま作ってしまったので、
増設部分のボードの設計に当たって頭を悩ませることになりました。
検討の初期段階では増設部分のボードも既存のボードと同様の仕様で製作することを考えましたが、
既存のボードは収納や運搬のことを考慮して、ボードの長手方向の両端部分は、
ボードを重ねたときに14mm幅のボードの側枠の角材が載ります。更にボードを重ねた時に側枠の角材のズレを防止するため、
側枠が載る部分に沿ってボード上に4mmの角材を取り付けたため、
ボードの端には片側計18mmのシーナリ―の無い空白部分があります。
増設部分のボードも同様の構造にするとボードを横に並べた時に36mmのシーナリー空白部分が生じ、
シーナリ―付のレイアウトとしては見苦しいものとなります。
また駅のボードと増設部分のボードで並行する線路の間隔も70mm程度必要で、他の部分の50mmより広く見栄えが良くない上、
線路間の渡り線の長さが長くなるため客収線の有効長が短くなるなど様々な不都合が生じることが分かりました。
そこでこれらの問題を解決し、強度や運搬・収納を考えた結果、増設部分のボードは従来のボードと同様厚さ9mmのシナベニヤに、
駅ボードと反対側(レイアウトの外側)は従来同様高さ30mm幅15mm(今回は幅14mmの角材が入手できませんでした)の角材を側枠とし、
一方駅側の従来の駅ボードと隣接する側はベニヤの上面の端に厚さ2mm幅30mmのアルミ帯板を駅側に14mm張出して取付け、
その張出部分が駅ボード端の14mmの部分に載る片持ち構造としました。アルミ材の上にも線路を敷設することにより、
駅ボードの端の線路と増設部分の端の線路との中心間隔が55mmに収まり、
またシーナリ―の欠損部分も側枠のズレ止めの角材の4mmのみとなり、ほとんど違和感のない状態となりました。
ベニヤボード上この2mm厚のアルミ材が出っ張りますが、
線路部分は従来同様全て2mm厚のコルクボードを貼っているため高さは同一となり、線路の敷設に問題はありません。
文字による説明では分かりにくいと思いますので下図をご覧ください。
また増設するボードの駅側はアルミ材の端までシーナリ―が付くので増設部分のボード同士を直接重ねて収納することが出来ないため、
300mm幅の片持ち構造のボード用に後述の運搬・収納のための専用の収納箱を作ることとしました。
増設部分のボードの基本構造が決まりましたので、実際の線路配置を基にボード毎のポイントや機関庫、
転車台と周辺の給炭台や給水塔等の配置を考えます。線路配置は全体の長さを若干短縮したものの、
ほぼ蒸機・アブト時代の実物通りとしました。同時に基本ギャップや機関車等を留置するためのギャップも決めました。
できるだけポイント部分でボードを分割することを避けたため、ボードの長さは横川側(東側)から
450mm、910mm、910mm、910mm、400mm、750mm(転車台ボード)、300mm、910mm、910mm、600mmの10枚で全長7050mmとなりました。
幅は前述の通り、基本的に全て300mmで、転車台が載るボードのみ450mmです。
尚、転車台のボードの駅側の長さは750mmですが反対側は910mmでその差の部分は左右の幅300mmのボードが嵌まり込む構造になっています。
転車台ボードと910mmボードの一枚は運搬・保管時に一番下になるので、両端に30mmx15mmの側枠を取り付けました。
増設ボード同士の接合は従来のボードと同様互いに嵌まり込み固定される構造になっています。
2. 増設部分の台枠ボードの製作
ボードに使用の9mm厚シナベニヤは渋谷の「東急ハンズ」で反りの無いものを選んだ後、
長さのカットや転車台ピットの穴あけを同店にお願いしましたので、手軽に正確な寸法のものが入手できました。
また2mm厚、幅30mmのアルミ材もボードの長さに合わせて同じく東急ハンズでカットしてもらいました。
ボードの組立は駅と反対側のベニヤの端に30mmx15mmの角材を側枠として木ネジで取り付け、
次に駅側に長手方向の反りを抑制するため20mmx10mmの角材を取り付けます。
ボードの駅側上面には2mm厚、30mm幅のアルミ材を従来の駅部分のボードとの整合性を見ながら14mm張出して、
ゴム系の接着剤と80mm間隔の木ネジ併用で取り付けました。
駅と反対側の上面にはボードを重ねた時の側枠のズレ止めとして端から15mmの所に4mm角の角材を接着します。
最後に駅ボードと固定できるようアルミ材の張出部分に原則各ボード一ヵ所穴を開け、直径6mm長さ6mmのアルミ丸棒をエポキシ系接着剤で取付け、
駅ボードにも穴をあけ丸棒が嵌まり込むようにしました。
アルミ材は張出部でボードの重量を支えますがアルミ板とベニヤボードの取付強度不足の問題はないようです。
各ボードには以前のボードと同様線路の路盤部分にはほぼ全面にわたり2mm厚のコルク板を貼り、
2mmのアルミ板と表面の高さを揃えました。
今回の増設の結果このレイアウトのボードの総枚数は39枚、運転時の最大寸法は11,610mmx3,270mmとなりましたが、
運搬・保管時にはコンパクトに積み重ねられるので未だにワゴン型乗用車一台で運搬可能です。
なお運転会時にボードを組上げてみると、駅部分の各ボードと増設部分の各ボードの長さが違うため継ぎ目の位置が一致せず、
レイアウトの設置場所が平滑でないとボード毎に波を打ち、両ボード間の渡り線がスムースに繋がらないことが分かりました。
設置時にはボード毎に波を打たないようボール紙等のスペーサーで各ボードの高さを微調整しています。
(2020年5月 M.F)