(11)アクセサリーの製作・配置と今後の課題

 いよいよ13mmの組立式レイアウトの製作記も終盤に近づきましたが、 今月はアクセサリー類の小物について触れたあと、 このレイアウトの今後の課題等について述べたいと思います。

A. アクセサリーの製作

 レイアウトの製作でアクセサリーの製作・設置は最も楽しい部分かもしれません。 台枠ボードを作り、線路を敷設・バラストを撒き、地形を作り、 地面・草地をかなり大きな面積で仕上げていくのは、 少しずつ完成に近づいて行く楽しみはありますが、 実際はかなり単調な作業の繰り返しになりがちで相当な根気が必要です。 ところがアクセサリー類は小さなものではありますが、 ストラクチャー同様設置することによりレイアウトを生き生きと見せる効果が大きいようで、 作業にさほど時間も掛からず、作る者にとっては「美味しい」部分でした。  アクセサリーとはどの程度のものまで含むのかはっきりしませんが、 ここでは今まで触れて来なかった線路周辺の小物の作り方をご説明します。 と言いましても実際にはエコーモデル(以下エコー)の製品のオンパレードで、 製品の使い方の一例としてご覧下さい。これらはスケールも良く、 所謂マニアの心理を良くつかんだレイアウト製作には欠くことが出来ない製品となっています。

1.踏切


 このレイアウトには大小含めて6箇所の踏切があります。 舗装路は軽井沢駅を中軽井沢方に出たすぐのところに在る二十間道路 (現在のプリンス通り)の踏切のみで、あとは全て車が一台通れる位の砂利道です。 全ての踏切の護輪レールは70番の引抜レールを使用し、適当な長さに切断後先端を少し内側に曲げます。 この際レール下側の幅の広い部分に糸鋸で切込みを入れておくときれいに角度を付け曲げられます。 この護輪レールをフレキシブルレールの内側のスパイクに接するようにゴム系接着剤で固定します。 この位置で殆どの車輪は問題なく通過しますが、 バックゲージがやや狭い(11mm位)車輪は多少ストレスを感じることがあるので、 少し余裕を持たせたほうが良いようです。この護輪レールの内側に、 かなり以前に将来のレイアウト建設のためにと購入していた米国製のこげ茶に着色された木製の枕木を、 寸法を調整しながら枕木と直角方向に敷設しました。この枕木は70番レールと高さが同じなのは好都合で、 護輪レール下側に当たる部分を欠取り、 幅のみを調整しました。レールの外側はプラスティックのスパイクをナイフで撤去し、 そこに木製枕木をフレキシブルレールの枕木の端まで貼り付けました。 その先は以前にご説明した舗装路あるいは砂利道になります。 二十間道路には今後踏切警報機を設置する予定ですが、 他の小さい警報機のない第4種踏切はエコーの「きしゃにちゅうい」と書いてある踏切警標や、 X字にトラ塗りをした踏切標識をそれぞれアクリル塗料で着色後設置しました。 また道路から踏切に入るところは踏切防護柵がありますので、 一部はトラ塗りしたエコーのコンクリート製を、一部は木製の角材から作りました。

2.駅構内関係




 軽井沢駅構内のアクセサリーとしては枕木を使った小物がいくつかあります。 かつて鉄道線路周辺の柵は役目を終えた古枕木が多く使われており、 コンクリート製などのものより時代を感じさせますのでこれを採用しました。 前記の木製の枕木を一本ずつ紙やすりで角を落とすと同時に、 木に染み込んでいるこげ茶色を薄くすることにより古びた感じを出し、 片方の先端部分を四方ともナイフで斜めに面取りをします。 これを、ボード上に3mmドリルにより8-10mm間隔で開けた穴に木工ボンドをつけて差込み、 枕木の上方から1/3位の所に1mm幅の帯金を張り柵としました。 その他枕木を使った小物としては保線用に積上げたものや、側線終端部の砂利囲い、 車止めなどに使いましたが、もともと木製のため質感は良いようです。  駅構内にある他のアクセサリーとしてはホーム上の駅名標や駅前の電話ボックス・郵便ポスト、 また側線の先端部には各種の車止めや車止め標識があり、これらは全てエコー製です。 またこのレイアウトではボードを重ねた際の高さ制限の関係で架線柱や架線はありませんが、 軽井沢駅構内はアブトの頃から架線が張ってありましたので、その点検用の梯子も設置しました。 この梯子はどこの製品か分かりませんが、竹製の梯子を表現してありなかなか良い感じです。  昭和30年代の軽井沢駅構内の転轍機は電動のものは無く、 全て手動により現場で転換していたようです。そのため転轍機としては、 側線はエコーの錘付ポイント転換器を、 本線系統は以前発売されていたサスガ商会の標識付の転轍器を使用しました。 この標識付のものは二つのロストワックスパーツで出来ており、 夜間用の電球のレンズまで入った良くできたものでしたが、 小さいので紺と橙の塗り分けやインレタの貼り付け、 レンズのクリアー塗料での着色など手間が掛かりました。ただ完成するとその存在感は大きく、 駅構内の雰囲気づくりに大いに寄与しました。  詰所などの周辺には生活を感じさせる小物が色々あります。 ここでもエコーの製品が大活躍していますが、主なものを列挙しますと、 防火用ドラム缶、焼却炉、水道設備、薪置き場、やかん、バケツなどです。

3.沿線関係


 鉄道線路周辺には様々な標識類があり、雰囲気を盛り上げる重要なアイテムです。 エコーの勾配標は瞬間接着剤で組立て後、距離標・曲線標と共にアクリル塗料で 足元および勾配標の裏面を黒に、その他の部分は白に塗分けます。 勾配標と距離標は数字のデカールを貼りましたが 曲線標はあまりに小さく手と目に負えないので諦めました。 これらは下り方向に向かって線路の左側、 このレイアウトでは線路の外側の犬走り部分に1mmドリルで開けた穴に ゴム系接着剤をつけ差し込みます。距離標は適当に間隔をあけ、 勾配標は実際に勾配が変わる場所に、曲線標は曲線に掛かる部分に設置しました。 また所々に保線用に枕木を積み上げたものや、補修用の線路置き場も作りました。

B. 今後の課題など

 ほぼ一年をかけて13mmの組立式シーナリー付レイアウトの製作記を書いてきましたが、 既にお気付きのようにこのレイアウトはまだ完成とするまでには課題がいくつも残っています。
いくつか列挙しますと、

1.軽井沢駅構内の機関庫やターンテーブル
まずスペースの確保が先決です。 この部分がないと蒸気機関車からED42あるいは反対の付け替えが不自由で、 蒸気機関車の方向転換もできず運転が単調になりがちです。又機関庫やターンテーブル、給炭台、 給水塔などはレイアウトのハイライトにもなりますので、いつかは実現したいと考えています。

2.駅ホーム上の上屋
駅ホーム上に上屋があるかないかでは、実感という意味で大きな違いがあります。 しかしながら組立式のため取り外し可能の構造とする必要があり、 また屋根を支える支柱上部の構造がやや複雑で、この大量生産方法が未定で現在検討中です。

3.アブト式電気機関車用第3軌条と架線・架線柱
明治時代末期の碓氷峠電化当初(EC40型の時代)から1963年9月のアブト式廃止まで、 軽井沢駅構内の中ほどから矢ヶ崎信号所方面の上下本線には、 集電のための第3軌条が敷設されていました。これをレイアウト上にも再現したいと考えていますが、 数多くある複雑な形状の支柱の大量生産方法が未定で現在検討中です。また、実物の世界では、 アブト式電気機関車は軽井沢駅構内における回送運転の際は架線集電を行っていましたので 駅構内の一部には架線が張られていました。組み立て式レイアウトにおける再現は、 架線はもとより架線柱についても保守・運搬の観点から余りに無謀との結論に達し諦めました。

4.信号機
アプト式運転当時の軽井沢駅構内に どのような信号機が設置されていたかが正確にわかる資料が手元にはありませんでした。 想像では矢ヶ崎信号所寄りは2灯式自動信号機、 中軽井沢寄りは腕木信号機だったのではないかと思います。 (もしご存知の方がありましたらご教示ください。) 模型の世界では、最近はスケール通りでかつ点灯可能な非常に良くできたモデルが出てきました。 そのため当レイアウトにも信号機を設置したいという誘惑にかられましたが、 これも当レイアウトの場合は信号機の高さが運搬時のネックとなり、 取り外し式とするのもやや困難そうなため、とりあえず継続検討としています。

5.国道のコンクリート舗装の表現が改良の余地がある他、 道路関連の標識類等が未設置。また車やその他のアクセサリーを追加する必要を感じています。

6.生き物(特に人間)を殆ど配置していないため、動きが感じられませんので、 かなりの数を追加する必要がありそうです。

7.畑に作物が生えていません。まず製作方法から検討しなければなりません。 それらしく、且つ大量に作るのは相当な根気が必要と思われますので、 畑を少し潰して小屋を建てたり、あるいはテニスコートにするのも手かと思っています。

8.草地部分が単調すぎる感があります。

これらの部分は1.を除いては現在の状況で少しずつ作業ができますので、 製作方法を考えながら時間を見つけて完成に近づけて生きたいと思います。

レイアウトの製作関係は今回で一応終わり、 次回は最終回としてこのレイアウトを走る車輌や運転などについて述べたいと思います。 (2005年7月 M.F)