橋梁部のボードは「(3)台枠ボードの設計、製作」で述べた通り、 他の部分のボードとは川を表現するために構造が異なりますが、 地形などの基本的な製作方法は同じですので、 今回は橋梁や橋台・橋脚と付帯するシーナリー・ストラクチャーの製作、 および川自体の表現等について述べたいと思います。 前述の通り、下り列車は中軽井沢駅に到着する直前に湯川という川を渡ります。 このボードではこの湯川をイメージして川の前後の線路は築堤とし、 大小2連のガーダー橋で川を渡ることとしました。 1.ガーダー橋
鉄橋上の線路の枕木は、シノハラ製のフレキシブル枕木をそのまま使用することには長さ・高さ (厚み)の両方の点でやはり抵抗がありましたので、 最初は角材から作る方法を検討しました。 しかし2.5mm角の木製角材が入手できなかったため、 ストックしていた同社の発売初期の13mm用フレキシブル線路の枕木 (現在発売されているものは長さが26mmであるのに対して30mmとやや長めで、 偶々実物の鉄橋用枕木の規格2,400mmに合致)を加工することにしました。 まずレールの真下の枕木同士を連結しているプラスティック部分は、 鉄橋の場合横から見た時のシルエットの邪魔になるので、全て切り取ります。 次にこの1本1本ばらばらになった枕木の裏側に幅2.5mmに切った厚紙を貼って高さを加え、 もともとプラスティック成型上の都合からか、 やや下すぼまり(逆台形)になっている枕木側面が垂直になるようにパテで整形し、 断面が2.5mm(実物換算200mm)四方の正方形になるようにしました。 そしてこげ茶色に調合した水性アクリル塗料で塗装して鉄橋用枕木としました。 |
2.橋台・橋脚・石積み擁壁
石積みの橋台・橋脚は湯川のものが現存するので実物を採寸し、 設計図を描きました。模型の寸法は全体の高さを低くした以外はかなりスケールに近いものです。 両端の橋台は、まず出来上がり寸法より各側面それぞれ1mmほど小さめに9mm厚のベニヤで組立て、 この表面に先月号の「地表の製作」のところで述べた、乾いても紙の感じの残る紙粘土を練り、 1mm位の厚みになるよう薄く塗り付けます。石の質感を出すため、 軟らかいうちにこの表面に軽石(火山石で無数の空気穴がある物) を紙やすりで平にしたものを押し付けて切出した石を表現し、 これが完全に乾いてから0.5mm厚の金属板の断面を押さえつけて筋目を入れ、 石積みを表現しました。 石積み最上部などの一部にはプラチャンネルを加工したものを使用しています。 2つのガーダー橋の間にある丸みを帯びた橋脚も基本的には橋台と同様の作り方で、 若干小さめに削り出した木製のブロックに紙粘土を塗り付け整形、 乾燥後石積みの筋目を入れて表現したものです。 石積みに使う石は装飾を兼ねているのか表面は結構凸凹していますので、 あまり平滑に仕上げると雰囲気が違ってしまいますので注意が必要です。 橋台に連なる築堤の終端部となる丸石積みの擁壁は、 発泡スチロールを削って芯としその上に紙粘土を1mm厚位に塗り付け、 乾燥する前に3mm径の金属パイプを少しつぶして変形させたものを一つずつ表面に押し付けて、 丸石積みの模様をつけたものです。 塗装は橋台・橋脚・擁壁とも、 新しい石垣のような灰色に調合した完全艶消しの水性アクリル塗料を塗り、 これが完全に乾いた後、撮影してきた実物のカラー写真を見ながら、 錆色・灰色・土色など数色を薄く溶いた完全艶消しの水性アクリル塗料を 単調にならないように気をつけながら塗り重ねました。なお丸石積みの擁壁のみ、 丸石を一つずつ濃い灰色で着色した後薄く溶いたフラットアースで全体をぼかしました。 なお塗装の際あまり水分を含ませすぎると紙粘土が軟らかくなって膨らんできてしまいますので 注意が必要です。 |
3.橋梁部の組立て
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4.木 橋
欄干とその支柱、橋桁本体、3本の橋脚とも、 各種の国産・輸入精密木製角材・帯板材を使用しました。 まず、加工前に全ての角材・帯板材にステイン液を染み込ませました。橋の太鼓状のカーブは、 構造材用4本の3mm角材と欄干用2本の2mm角材をしばらくお湯に浸けて少し柔らかくしてから、 6本とも設計図通りの同じカーブを得られるように6本一緒に輪ゴムで強く縛り、 少しずつカーブさせ乾燥させました。 後はひたすら設計図に現物を載せてカーブを確認しながら欄干の支柱の帯板材を垂直 (カーブした欄干とは直角ではないので結構面倒)に立て、 構造材を4本縦方向に並べその上に帯板を横方向に貼って橋桁を完成させます。 橋桁は実物にも多少は歪みがあっただろうと勝手に想定して、やや気楽に作業を進めました。 3本の木組みの橋脚は3mmの角材の角を落としたものを使いました。 橋脚はやや不規則な配置で並んでいますが、これは川の水の流れに合わせたためのようで、 実物通りに配置してみました。 丸石積みの橋台はバルサ材のブロックに紙粘土を薄く塗り付けてパイプで型押ししたものです。 木橋の塗装は灰色・フラットアースなど数色を薄く溶いた完全艶消しの水性アクリル塗料ですが、 実物のカラー写真が入手できなかったため、色は想像によります。 |
5.川の表現
ここで水そのものを何で表現するか迷いました。 エポキシ樹脂やレジン等での作り方が雑誌に解説されていますが、 発熱や臭いのことも書いてあり、買って来てはみたものの、 結局使い慣れている木工ボンドで表現することとしました。 木工ボンドは薄めずに川の部分に5mm程度の厚さに刷毛で伸ばしますが、 そのままでは粘度が高く細かい部分に流れませんので、 水を含ませた刷毛で浸透させます。乾燥するとかなり収縮し、 どうしても川の端の部分が盛り上がるようになりますので、 端の部分はやや少なめにボンドを盛り付けます。 乾燥し透明になったら再びボンドを塗り重ねて厚みを増し、 川の流れを考えた上、波立ちを表現すべく表面に川と直角方向に大まかに刷毛で筋を付けていきました。 乾燥後、晴天の夏の日を表現するために、表面にクリヤーのブルーとグリーンで強弱をつけながら着色し、 水が泡立つ部分には筆先に白を含ませた刷毛で泡を表現しました。 完成後に現物を見た時はあまり実感的には思えませんでしたが、 写真に撮ると不思議なことにそれらしく見えるので良しとしています。(2005年4月 M.F) |