(2)駅部分の追加製作

1.ホーム上面の取替と上屋の製作

 アブトの時代の軽井沢駅には20メートル級客車10両分の旅客ホームが有りましたが、当時の他の中規模駅と同様、上下線とも主要部分に5-6両分の上屋が付いていました。このレイアウトの製作当初から、駅の雰囲気を倍加させる上屋を是非とも作りたいと思っていましたが、実物の木製で総数50組に及ぶ柱と小屋組を木製角材で切出して正確に組立て、更に延長部で古レールを使った13組の柱のある上屋を製作することには、技術的にも根気の面でもかなり躊躇が有りました。 またこのレイアウトは組立式のため、上屋をホームに固定するのか、取外し式にするのか、外観や強度の面も含めて決められず、20年以上も上屋の無いまま時間が過ぎました。





 前述の通り2015年末の第1回鉄道模型芸術祭に参加させていただいた後、2017年3月開催の第2回にも出展することになったため、この機会に思い切って懸案の上屋設置を目指すことになりました。実際の製作に当たっては、以前から3Dプリンターによる模型製作やレーザーカッターによる紙や木製材料の彫刻・切出しの研究開発に励んでいた当会会員のNIが上屋製作の協力を申し出てくれたお蔭で、何とかスケールに近い満足できる上屋を完成することが出来ました。レイアウトの運搬・保管時の容易さを考えて上屋は取外し式として設計、ホーム上面のコンクリート部分やタイル部分も同時にボール紙へのレーザーカットで表現することとしました。
 上屋の木製の柱は、上りホームは横方向の間隔を45o、直角方向も45oとし、下りホームは、横方向は同じ45o、直角方向はホームの幅が広いので55oとして、両者とも屋根の勾配は4寸としました。小屋組は2.0o厚、柱及び横方向の梁は1.6o厚の航空ベニヤをNIにレーザーカッターで切出してもらいました。



レーザーで少し焦げて黒くなった切断面を綺麗に仕上げ、太くなった柱の下部はレーザーカットした薄板を巻いて表現してから、木工ボンドで柱・梁と小屋組を組立て、クリーム色を吹付塗装しました。尚、柱や梁をほぼスケール通りの太さにしたため強度不足が感じられる箇所は、瞬間接着剤を流して強度を増しておきました。土台のコンクリート部はDMM.comに3Dプリントを外注してもらい、屋根のスレートの波板はエコーモデルの波板がこの屋根には少しピッチが細かすぎるように感じたので、今回はノースイースタン製のピッチ1.4oのアルミ製波板を使いました。この製品はアルミのため加工はし易いですが、塗料ののりが悪く、後刻あちこち剥がれる部分が出てきてしまいました。軒にはエコーモデルの横樋と縦樋を取り付けました。


 古レールを使った延長部の上屋の梁はホーム中央部にレールを底同士で半田付けして立たせ、上部で左右別れて屋根を支える構造ですが、これも各部材をNIが3Dで外注し、製品を受取後NIがその3D部品を原形として真鍮ロストワックスで製作してくれました。レールの梁の間隔は上下線とも55oです。個々の真鍮部品が揃った後、帯板の筋交い等も含めて半田で組立て、やはりクリーム色で吹付塗装しました。
 ホーム上面は全て2o厚のボール紙にタイルなどをレーザーカットで表現してもらい灰色に吹付塗装後、ホーム端のコンクリートブロック部分はホーム本体に接着固定しました。3.75o角ブロックタイルのあるホーム中央部には上屋の柱部分を取り付けて、ホーム中央部上面と上屋部全体をホーム本体から取り外すことが出来るようにしました。ホーム上面の土の部分はレーザーカッターで少しへこましてもらい、そこにタミヤの情景テクスチャーペイントのライトサンドを塗りつけて土の表現をしてから着色しました。タイル部分や土の部分で上屋が無いところは取外し式にはせずホーム本体に固定しました。



2.ホーム上アクセサリー等の製作

 一般的に優等列車の停車駅にはホーム上に様々な設備が有りました。特に軽井沢駅は全ての上下列車が碓氷峠用の補機の解結のため数分間停車するので、売店や立食い蕎麦屋、待合室そして特に蒸気列車区間では不可欠の洗面台等が有りました。これらの小物も雰囲気造りには欠かせないものなので設置しましたが、何分このような施設の当時の写真が殆んどないため、ごく少ない断片的な写真を頼りに推測や好みで製作しました。待合室は兄の作です。

売店

今で言うキヨスクですが、鉄道弘済会の営業だったのではないかと思います。これはクラシックストーリーの売店のキットを使い、ホーム用としては少し背が高いので上部を切り落として組立てました。このキットには週刊誌や新聞、駅弁やたばこの販売用のアクリルケースなど入っており、なかなか楽しめるようで、私の妻が結構喜んで組立てていました。

洗面台

キットで販売されているものが無いので、後年まで軽井沢の上下線ホーム上に残っていた洗面台の写真をベースに造りました。2o厚のベニヤをベースに下り線用は裏と表に4人分ずつ、上り線用は片側に6人分の洗面設備を設けました。鏡は東急ハンズで見つけた0.5o厚のポリカーボネート板(ミラー)を小さく切断し、水栓金具はエコーの水栓蛇口を使いました。洗面台上部はそれぞれ濃い緑色とえんじ色の大理石作りのように見えたので、ネットで見つけた似たような色の大理石の写真を写真用紙にプリントし、貼りつけました。鏡は表面に貼ると出っ張ってしまうので、この写真用紙をくり抜いて埋め込みました。蛍光灯は半円のプラ材を使用しました。

蕎麦屋

軽井沢は駅そば発祥の地だそうで、やはり立ち食いそば屋は必需品です。簡単にまとめるため、1o角木材の柱で構造を作り、それにノースイースタン製の羽目板を嵌め込み、上下線ホームにそれぞれ設置しました。蕎麦屋に見えないと困るので暖簾と価格表も付け、販売のおばさんも雇用しました。丼は適当なものが見つからず、高価ですがエコーのお椀型ライトです。

待合室

軽井沢駅下り本線ホーム上の待合室の写真は、ネットも含めてかなりいろいろな資料を探しましたが、蕎麦屋の隣に配置されていたらしいことがかろうじてわかる写真しか見つけられませんでした。従って、同じ時代の国鉄本線の他の中規模の駅のいくつかの写真を参考にして、ホームの寸法に合わせて適当にデザインしました。
窓と扉はエコーモデルのエッチング抜きの製品で、窓も扉も一部開いている状態にしました。壁板はいさみやの方眼紙をエバーグリーン製の0.5o厚のプラ製羽目板で挟んであり、内部も羽目板としました。柱と横桟は0.5ox1oのプラ帯板、0.5ox2oの木製帯板、2ox2oのプラアングル、3ox1oのプラチャンネル利用です。四方の壁が全て窓か扉という、壁部分が全くない建物なので、模型の構造としては天井から地面までつながっているのは細い柱のみということで、昔ながらの手法で直角を正確に組み立てるのにかなり苦労しました。

ベンチ・看板・案内板等
これらの小物はNIがその技術を駆使して作ってくれたものを中心に組立て設置しました。一部のベンチの看板はネットで見つけた実物の写真をプリントして貼り付けました。雰囲気を上げるためには重要なファクターです。







3.跨線橋の改良


 跨線橋の製作については以前掲載した製作記でご説明しましたが、その後少し手を入れました。橋脚部の斜交い中央部に外径4oのアルミパイプを切出した中央部を付け、橋脚の基礎部分はコンクリートで嵩上げしました。この嵩上げは、実物では明治末に碓氷峠が電化された時に架線を張るためのクリアランスを確保するために実施されたものと思います。また、階段部の下部には倉庫を設置しました。

4.アンカプラーの設置

 従来このレイアウトの軽井沢駅のホーム部分では補機の解放のためにケーディー社のアンカプラーを使っていましたが、電磁石式のものは高さが高くボードの下に入らないため永久磁石のものを使っていました。解放のみ必要なEF63の使用については特に問題が有りませんでしたが、2018年にED42を13o化して入線させるに当たり、機関車を交換する場合、永久磁石では解放は出来ても同じ場所で連結ができないため、このレイアウト上でも本格的に補機の解結をケーディーカプラーを使って自動で行うべく検討に入りました。

 丁度この頃ノーブルジョーカー会員のNOが米国Rapido Trains社のRailCrewと言う1個3,000円余りの電磁石式のアンカプラーを紹介してくれました。このアンカプラーは直径44o、高さ20oの円筒形で下部に厚さ14o強の配線用のコネクターが付いています。円筒の中は上下に2分割され、上段には2個の永久磁石が90度回転するようになっています。下段にはDC12Vで作動する電磁石が入っており、通電すると上段の永久磁石が90度回転しマイクロスイッチにより通電は切れます。永久磁石が線路と平行に並ぶ場合はカプラーは反応せず、線路と直角になる場合はケーディーカプラーが解放します。かなりアナログな構造で動作は確実ですが、カプラーの動作範囲は中心から前後10o程度とかなりシビアです。

 このアンカプラーをNOに米国から輸入して貰い、列車の前後に連結されるED42の解結をするために、上下の本線・副本線に計12個、線路の下に設置しました。設置場所は、本線は20m級客車7両、8両、9両、10両編成にそれぞれ対応できるように決めました。設置に当たってはボード内に収めるべく高さを減らすため、コネクターを外して直接結線とし、9o厚のボードを裏側から線路の枕木下まで掘り込み設置しました。このアンカプラーの上にはバラストが撒けますので、上から設置場所は分かりません。
 前述のようにED42は原則的に列車の前後に連結しますが、アンカプラーの動作範囲が狭いため、編成の長さがかなり正確である必要があります。ケーディーカプラーは前後のガタも多く通常車両間隔も広くなるので、アンカプラーの設置に当たっては中間になる客車は全てIMONカプラーに交換しました。このカプラーはガタが少なく曲線部で車両間隔が伸びる構造になっており、直線部ではほぼスケール通りの車両間隔が保てます。
 このアンカプラーの+−の切替スイッチを前述のコントロールボード上に設置することにより、実感的な機関車の解放、連結が出来るようになり、運転の面白さが倍加しました。