(1)増設部分の製作

その5 コントロールボード・ストラクチャー等の製作他

7.コントロールボードの再製作



 ポイントの転換や給電の操作をするレイアウト全体のコントロールボードは、以前製作した時点で今回の増設部分については考慮しておらず、増設部分のみ製作するか全体を作り直すか検討しましたが、作業量はかなり多くなるものの、運転の容易さを考えて全て作り直すこととしました。DCC全盛の時代ですが、知識不足と共に故障時の復旧の容易さを口実に、ポイントの転換やレールへの給電は従来通りのアナログ、デュアルキャブコン方式を踏襲しました。秋葉原でコントロールボード用のアルミ箱、スイッチ類、ケーブル、コネクターを購入し製作に掛かりましたが、スイッチやコネクターなど四半世紀前に駅部分のコントロールボードを製作した時と同じ製品が売られているのは驚きでした。アルミ箱上面に線路配置に従って、幅9mmの青(本線)と緑(側線)のダイモテープを貼ります。ギャップが有るところはテープも間隔を空けます。貼り終えたら給電用とポイント用のスイッチが入る穴をテープ上に開け、スイッチ類を取り付けます。今回の増設部分のポイントは転換後マイクロスイッチで通電が切れますので、ポイントスイッチも開通側に倒れたまま固定されるものを使用しましたが、ポイントのスイッチについては以前の電磁石式マシン用のスイッチが戻るタイプと同居することとなりました。アルミ箱の後面には各ボードや電源と接続するためのコネクターを取り付け、スイッチやコネクター間をケーブルで接続します。尚、転車台ボード上の線路への給電もこのコントロールボード上で操作しますが、転車台桁上の線路への給電は桁の方向の転換時に対応するため+−の変換スイッチも設置しました。また次回ご説明する駅の本線上に取付けた電磁石式のアンカプラーの作動スイッチも、コントロールボード上に取付けてあります。



 完成しましたら各ボードとケーブルで接続し、フィーダーへの通電と、ポイントの転換、アンカプラーの動作を確認します。今回の完成によりボードへの配線ケーブル数は7本、以前ご説明した転車台のコントロールユニットから転車台ボードへ1本の計8本となりました。

8.シーナリ―の製作


 今回の増設部分は殆んど起伏も無く従来同様の方法で製作しましたが、従来と違う造り方をした部分を少しご説明します。
 今回は前述の通りボードの駅側の端に30o幅のアルミ板が取付けてありますが、アルミ板上のシーナリ―やバラスト等を従来通り薄めた木工ボンドで固定した場合、接着強度不足で剥がれてくることが懸念されました。そこでアルミ板上では線路を敷いた部分を除き1o厚のコルク板をゴム系接着剤で固定し、その上に薄めた木工ボンドを塗りプラスターを茶こしで撒いて土の部分を表現し、バラストを撒いてボンドバラストで固定しました。線路部分の枕木間はアルミ材の上に直接バラストを同様に固定しましたが、今の所剥がれたりすることは無いようです。

9.ストラクチャー・アクセサリーの製作



 蒸機の時代には明治期に造られた大変雰囲気のあるストラクチャーが軽井沢駅構内にいくつかありました。今回の増設部分に設置したストラクチャーの中で,詰所などの一般建物は写真も少なく、当時の典型的なスタイルのものを市販のキットなどを利用して適当に作ることにしましたが、煉瓦の機関庫、給水タンク、給炭台2つ、円形煉瓦倉庫、貨車移動機車庫などは出来るだけ当時の軽井沢駅構内にあった実物に似せて作ろうということになりました。 しかし、貨車移動機車庫は1963年に蒸機が無くなった後、転車台と共に取り壊されたと思われ、2つの給炭台や煉瓦の機関庫は入換用のC12の運用が廃止になった1969年には解体され、我々が目にはしているはずなのですがはっきりした記憶はありませんでした。また給水タンクは1975年に写真を撮っていましたが、軽井沢駅構内のレイアウトを作ることを考え始めた1989年に駅構内のストラクチャーの写真撮影を行った頃には、円形煉瓦倉庫の他は既に跡形もなくなっていたため、模型の製作はひたすら古いモノクロ写真を集めて寸法の見当をつけてもっともらしく作る方法以外はありませんでした。
 今回も前回同様、ストラクチャーは主に私の兄に製作してもらいましたので、彼がその製作のポイントをご説明します。

1) 給炭台
 a) 転車台脇の給炭台


 給水タンクの隣にある大きい給炭台です。主として本線運転の蒸機(D50、D51)が必要に応じて給炭していたと思われます。寸法はかき集めた10枚程度の写真からの推定です。偶々構内入換用のC12が横付けされている写真があり、これが寸法割り出しには大いに参考になりました。模型の寸法は、全長100o、全幅40mm、石炭台上面高さは路盤から32mm(レール上面から28.3o)にしました。 コンクリートの脚は6o角のものが5本×3列で15本です。
(1mm + 6mm + 17mm + 6mm + 17mm + 6mm + 17mm + 6mm + 17mm + 6mm + 1mm = 100mm)
構造は実物の構造を写真から推定し、基本的には木製の部分は木製材料(角材と薄板の組み合わせ)で組みました。コンクリートの脚15本はプラの6o角材です。コンクリートの質感はサフェーサーとウェザリングで表現してみました。

 b) 引込線の上屋付き給炭台


 この給炭台は入換用蒸機専用だったらしく控えめな存在で、資料となる写真が特に少なく、しかも時代によって特に上廻りの形態が大きく変化していたらしいため、どのように作るかかなり迷いましたが、最終的には軽井沢らしくユニークなところを強調した形にしました。具体的には古レールを使った脚の補強の筋交いに古ラックレールを使っている所です。
模型の寸法は、全長66o、全幅40mm、石炭台上面高さは路盤から32mm(レール上面から28.3o)にしました。模型としての構造は写真から読み取れる限りの実物の構造通り、上部は基本的に木製材料(角材と薄板の組み合わせ)ですが、屋根のトタン板部分はヒルマモデルクラフトの石炭台のキットについていたプラ製のパーツを流用、正面開口部の上の稲妻状の梁 (屋根の庇でほとんど見えません!)はNゲージの架線柱のセットに入っていたプラ製パーツが偶々寸法的にぴったりで、これを利用しました。


下廻りは、脚は5本x 2列の計10本で、脚部分は実物はレールを背中合わせに貼り合わせて,上端で反対方向へ鋭く90度曲がっている、というものでしたので、実物同様レールを折り曲げて再現しようと試みましたが全く上手くゆかず、当会メンバーのNIがパソコンで図面を引いてDMM.comで3D印刷をしたものを原形に、ロストワックスで吹いて製作してくれたものを使用しました。また脚の土台のコンクリートブロックもDMMで3D印刷してもらったものです。 さらに、実物の脚の補強として入っている筋交いが古ラックレールを利用したものだったらしい写真があったためこれを何とか再現すべく、これもNIに頼んで0.3mm厚のバルカナイズドファイバーをレーザーカットしてもらったラックレールを使いました。

2) 貨車移動機車庫


貨車移動機車庫は、当初形態が似ていたのでエムズコレクションのトロッコ小屋のキットをそのまま組み立てて使おうと軽く考えていたのですが、組み立ててみたら軽井沢駅のものよりも小さい感じでしたので,実物写真のイメージの大きさと、模型の貨車移動機を実測した結果を踏まえて、もっともらしい寸法のものを作りました。
基本的な構造はいさみやの方眼紙とSTウッドと角材ですが、少し手が掛かったのは、入口扉を可動式にすること (蝶番部分の構造) と、扉の板張りの模様 (STウッド薄板組み合わせ) と,側面上部の明り取り (換気口?) 部分の細かい桟の表現(極細の角材を等間隔に並べる)でした。



3) その他の建物
転てつ手小屋
実物は後年白く塗られていましたが,他の建物とのバランスがやや悪いということで,普通の木の色にしたものです。 第一次製作の詰め所などと同じ工法なので,特記するほどの部分はありません。

その他詰所など
エコーモデルで購入したエムズコレクションの詰所や、保線係詰所、駅構内物置等のストラクチャーキットをほぼストレートに組み立て,塗装の上ウェザリングしました。



4) 機関庫、給水タンク、円形煉瓦倉庫
軽井沢駅構内にあった大変雰囲気のある煉瓦造りの3線の機関庫や給水タンク、そしてアブト区間が蒸機運転だった時代に造られた給水タンクのタンク部分を取り除き、倉庫として使われたと言われる円形の煉瓦倉庫が有りました。これらの建造物は電化後も暫く残っており、特に煉瓦倉庫は新幹線の開業前まで残存していたのでご記憶の方も居られると思います。煉瓦造りの建造物は当時の雰囲気造りに大変有用なので、是非とも設置すべくその煉瓦のレーザーカッターによる表現等について当会のNIと検討を重ねておりますので、完成の暁には改めてご説明いたしたいと思います。

5) アクセサリー
 前回同様、線路際や細かいアクセサリー類は主にエコーモデルの製品を利用しましたが、今回初めて同社の蒸機の給水用のスポートを実物通り転車台近くに設置しました。なかなか良い雰囲気です。又妻が詰所の横に菜っ葉服などの洗濯物を干したり、所々に職員や犬を配置したりしています。今回は初めてアシュピットを3ヶ所に造りましたが、その内側と周辺にかき出した石炭殻は暖炉で集めた灰を利用し表現しました。





10.増設部分の製作期間と費用

 今回の増設部分の製作については2015年の1月から詳細な検討を始め2-3年かけてゆっくり作るつもりでしたが、同年春ごろ同年末に開催される第1回鉄道模型芸術祭に参加させていただくことになったため、急遽大急ぎで製作することになりました。幸い退職後で時間は十分にあり、またストラクチャーはほぼ兄が製作してくれたので11月のクラブの運転会時には概ね完成し、不具合部分を修正して12月の芸術祭に間に合わせることが出来ました。人間はっきりした目標が有ると、製作のスピードが上がるものですね。
 今回の増設に当たっては掛かった費用を項目ごとに纏めて記録していました。ここには兄の製作したストラクチャー関連の費用は含まれておりませんが、ご参考までにお知らせします。

ボード作成関連 ¥36,721
線路・ポイントマシン関連 ¥93,462
転車台関連 ¥218,015
電気関連 ¥70,219
シーナリ―関連 ¥21,394
その他 ¥18,440
¥458,251

上記のように総費用の大よそ半分は転車台関連の費用ですが、それを除くと最近の真鍮製の機関車の完成品1台分よりも低い費用でかなり長い時間製作を楽しめました。

(2020年9月 M.F)