(6) 路盤、築堤、道床、線路の製作

1.路盤の製作

 このレイアウトのボードの構造は当然フラット・トップになりますので、 勾配途中、築堤部等はすべてボードから持ち上がった状態になります。 工作を始める前に1/5の図面上に、線路の中心の位置を0.5mm単位で縦・横の座標のように記入、 またボード上面から路盤までの高さを0.1mm単位で正確に計算し記入します。 この際直線からカーブにかかる部分に緩和曲線、 レベルから勾配にかかる部分に緩和勾配を取り入れますと、 車両運転時に滑らかな動きとなると同時に、脱線のリスクも減ることになります。 この図面を基に、角材や車体工作用ボール紙で高さを正確に調整しながら、 路盤を載せる60mm幅(横川方の複線部分は110mm幅)の架台をボード上に150mm間隔で接着していきます。 昨今は勾配のついた発泡スチロール製の便利な部材も販売されており、 音の反響の点と簡便性では良い素材ですが、自由な勾配をつけることはやや困難のように思えます。 架台が完成したら枕木方向に傾きがないか水準器で確認後、 その上に70mm幅(複線部分は120mm幅)で切出した4mm厚のシナベニヤの路盤を 木工ボンドで接着していきます。実物の線路を断面で切った場合の、 犬走りから犬走りまでの最大幅は2級線の単線で5200mm以上となっているため、 幅は70mmとしました。 路盤のベニヤは7mm厚程度の板を使った方が防音効果の点では望ましいと思いましたが、 切り出す手間や重量を考えて4mm厚としました。 強度は問題ありませんがやはり多少反響するようです。

 駅構内部分からの接続部は、勾配によりある程度の高さになるまで路盤は必要ありませんので、 駅構内の2mm厚のコルク板道床と繋がるよう、 35mm幅(横川方の複線部分は85mm。以下同様)2mm厚のベニヤで道床を表現し、 勾配によって上面の高さがボード上面から4mmになるまで持ち上げたところで、 やはり35mm幅の4mm厚ベニヤの道床と接続しました。 この4mm厚のベニヤの上面が勾配によって8mmの高さになったところで、 初めて70mm幅(複線部分は120mm。以下同様)4mm厚の路盤を敷き、 その上に35mm幅、4mm厚のベニヤの道床を接着します。 更に勾配によってこの上面が3.5mm上がって11.5mmの高さに達したところから、 路盤の上に7.5mm厚のコルク道床を貼りました。 前述のとおり上り勾配は路盤の下の架台の高さによって支えてゆくことになります。 蛇足ながらカントをつける部分も実物同様路盤は枕木方向に水平としておきます。
 ここまで完成しましたら、再度各所で枕木方向に傾きがないかチェックし、 さらに水平方向に透かしてみて路盤が波を打ったりしていないか、 ボード間で滑らかに繋がっているか等を十分に確認し、 必要があれば労を惜しまず修正しておく必要があります。 この段階では首都高速の高架部分のような姿になっています。

2.築堤の製作


 模型レイアウトにおいては、ほとんどの場合列車は上から見ることになりますが、 実物を見るのと同様に走る列車はやや下から見上げることができれば格好良く見えること、 また線路につけた勾配を目立たせたいという目的もあって、 このレイアウトでは築堤を数箇所に取り入れました。 築堤は実物では丘陵と丘陵の間、橋梁の前後、 平坦地から丘陵にかかる部分等に見られますので、 模型でも不自然にならないようにするためにこのような地形のところを選ぶ必要があります。 このレイアウトでは軽井沢駅を出て中軽井沢方向に6〜7‰の勾配で上がる曲線部分と、 その先直線部分になって丘陵地帯を更に10‰ほどの勾配で上った先の橋梁にかかる手前、 及び橋梁を通った先の下り勾配部分に築堤を取り入れました。 築堤の側面は3mm厚のベニヤで上記の4mm厚の路盤からボードに向けて45度の傾斜で取り付けました。 模型の作例の多くは用地が狭いこともあって55〜60度くらいで取り付けられているものが多いようですが、 国鉄の規定では最急勾配で45度になっているようですし、 その方が国鉄のゆったりした感じを表現できると思い、このレイアウトでは45度を採用しました。 築堤側面のベニヤは、とくに勾配で曲線となっている部分は非常に複雑な寸法・形状となるため、 切り出しには苦労しました。数学に強い方であれば計算できるのでしょうが、 結局ほとんど現物あわせで作りました。 切出したベニヤは路盤及びボードとの接触面にボンドを塗り、乾くまでスパイクで止めておきました。 なお築堤内部に見える黄色の物体は防音効果を狙って充填したスプレー式の発泡剤ですが、 効果が認められず途中から使用をやめました。

3.道床の製作


 道床の厚さは、実物では2級線で250mm以上となっているため、 当初路盤上に3-4mm厚のベニヤを張ろうかとも考えましたが、 路盤の切り出しでかなり手間のかかったこともあり、 また防音効果も狙って市販のコルク道床を全面的に採用しました。 完成した路盤の上にコルク道床を木工ボンドで正確に図面通りに貼り付けていきます。 このコルク道床は厚さが7.5mmほどありそのままでは道床としては厚すぎますので、 路盤上犬走り部分に4mm厚のコルク板を貼り付け、段差を3.5mmとしました。 犬走りまで完成しましたら、犬走りのコルク部分上面から築堤にかけて、 コルクの凸凹や築堤側面のベニヤ部分との接合部の段差を紙粘土で埋めました。 さらに築堤側面もあまり平坦では味気ないので紙粘土で多少凹凸をつけました。 その後、バラストを撒く前に、 犬走り部分のみ薄く溶いたボンドを塗った上にトミックスのプラスターを茶漉しで散布、 タミヤのアクリル塗料のバフとアースにフラット・ベースを混ぜたもので着色しておきました。

4.線路の製作

 道床が完成しましたらいよいよ線路の敷設作業にかかります。 線路は駅構内と同じく全てシノハラの13mm用フレキシブルレールを使用しました。 コルク道床を採用した部分については、 敷設に当たってはスパイク時にレールが沈み込まないようとくに注意が必要です。 またボード間の線路の接続部分は水平・垂直方向とも正確に合致するよう工作しておかないと、 車輌が通過時に大きく揺れ、ひいては脱線の原因にもなります。レールの継ぎ目、 ボード間のレールの接続はジョイナーを使用し、 ボード間の電気配線は駅構内部分を除き一切省略しました。 カーブ部分には見た目の格好良さに惹かれカントをつけました。 模型の場合、特に13mmゲージを採用した場合はカントも脱線の原因になり得ますから、 組立式のレイアウトでは固定式よりさらに工作の精度を上げておく必要があります。 脱線が一番発生しやすい場所はカントにかかる、つまり直線から曲線にかかる部分です。 この部分は左右のレールが徐々に捩れて行くため、 導入部を少なくとも300mm程度取ってカントを徐々につけないと、 車両がレールの捩れについて行けず脱線してしまいます。 また車輌側もセンターピンに入っているバネの圧力が強すぎると脱線する傾向にあります。 カントはいさみやの車両用方眼ボール紙を貼り合せて、 曲線半径にあわせて0.5-1.0mm厚程度にし、曲線の外側の線路の枕木の下に貼り付けました。 線路の敷設が終わりましたら、全ての部分で枕木方向に水準器を当て、直線部分は水平に、 曲線部分は連続して同レベルのカントがついているか、またレール方向にも水準器を当て、 勾配も連続して同じ勾配になっているか確認します。 バラストで固着すると修正が難しくなりますので、この段階で何度も試験走行を繰り返し、 不具合部分は調整した後、レール・枕木をタミヤのアクリル塗料で着色しておきました。 本線部分はレッドブラウンに、側線部分は明快灰色とバフを混ぜたものに、 それぞれフラット・ベースを入れ使用しました。
 バラストはトミックスの細かい物を使い、本線部分は枕木の上面と同じ高さまで、 側線やポイントの可動部分はやや少なめに散布します。 枕木の上面にはバラストが残らないよう、また全ての部分が均一になるよう注意し、 本線部分は肩がだれないよう気をつけました。単線線路を断面で切ったときに、 バラストの肩部分の幅は約36mm、下部の幅は54mmを基準とし、 犬走りは片側5-6mm残すようにしました。 バラストの形が整いましたらボンドを染み込み易くするため、 水に界面活性剤として台所用の中性洗剤を1-2滴混ぜたものを霧吹きで全体に吹き付けます。 この作業を怠ると、ボンドは玉になり染み込んでくれません。 ボンドは木工ボンドと水を1:1〜1.5で薄めた溶液を使用、 鶴口でバラストを崩さないよう注意しながら十分浸透させます。 それでもバラストが流れたり、崩れたりする部分が発生しますので固まる前に修正しておきます。 バラストの散布は大変根気の要る作業です。単線で90cmの長さの線路にバラストを撒き、形を整え、 ボンドを撒き終わるまで2時間ほどかかります。更に固着までに約一昼夜かかります。 駅構内は自分で撒きましたが、それ以外の線路は殆ど妻と娘が撒いてくれましたので大変助かり、 感謝しています。全て固着が終わりましたら、何度も試運転を繰り返します。 固着する際に万一線路に狂いが生じた場合は、 バラストに水分を十分染み込ませることで再びやわらかくなりますので修正します。 コルク道床のせいもあり比較的静かだった走行音は、 バラストを固着することによりにぎやかになってしまいました。 バラストの着色は線路同様、本線部分はレッドブラウンを使いました。 昨今の線路は制輪子がレジンに代わったため比較的きれいですが、 昭和30年代は鉄制輪子を使用していたこともありかなり赤茶けていました。 側線部分は明快灰色とバフを混ぜたものにフラット・ベースを入れ使用し、 車輌が入線するところは、薄く溶いたレッドブラウンでその上から軽く着色しました。
(2005年1月 M.F)