(1) レイアウト作りを始めるにあたって
固定式レイアウトを持つことは、鉄道模型を愛好するモデラーにとっては憧れであり、
また夢でもあります。固定レイアウトの魅力はなんと言っても、いつでも、
気に入った景色の中で好きな車両を走らせることが出来る事に尽きると思います。
しかしながら、現在の都会に暮らす普通の給与所得者で所謂マンション住まいをしている人は、
確保可能なスペースにはおのずと限りがあるのが現実です。ある程度スケール物を目指す者にとっては
小型のローカル線を再現する場所を手に入れることが限度かもしれません。
一介のサラリーマンである私もご他聞にもれず固定レイアウトを持つスペースを得ることは困難で、
また子供の成長などを考えた将来の引越しを考慮すると、レイアウトを持つことはいつまでも
夢に終わることが懸念されました。
ノーブルジョーカー(NJ)の運転会は、16番の組立て式レイアウトのため、
13mmゲージをやっていた私は止む無く、一人13mmのフレキシブルレールを木製道床にスパイクした物を
つなぎ合わせて運転を楽しんでおりました。しかし気に入った景色の中で好きな車両を走らせる、
さらに旧国鉄のゆったりした駅構内をスケール通りの編成で走らせたいという夢は捨てがたく1988年、
次女が乳児期を脱した頃、この夢を何とか組立て式のシーナリー付きレイアウトで実現すべく計画に着手しました。
以前TMSの故山崎主筆が「組み立て式のレイアウトでシーナリーをつけることは考えないほうが良い」旨の
ことを書かれていたことがあったかと思います。確かに組み立て式レイアウトは運転会の度に運搬、組立て、
解体を繰り返すためどうしても破損しやすく、またシーナリーをつけると重量が増し更に運搬時や、
保管に場所をとりますので再度スペースの問題も生じます。所謂マンション住まいではこの保管時の
スペースの問題も解決しなければなりません。しかし現実問題として当面固定レイアウトを持つことが
困難なことを考えれば、何とか多少なりともシーナリーのついた組立て式レイアウトを作り、
将来固定レイアウトを持つスペースが確保できた段階で、組立て式レイアウトをそれに転用できれば良いと
考えました。
ところがこの頃まで、固定レイアウトや台枠にフレキシブルレールを貼った運転会用の組立て式レイアウト、
モジュールレイアウトの製作記の発表はTMS誌上にかなりありましたが、シーナリーつき組立て式レイアウトの
記事は殆どなく、実際製作を始めてからは試行錯誤の連続となりました。
特に駅構内はボード毎にどのような線路配置にするか、ポイントをどのボードに載せるか、
ボード毎の電気配線はどうするのか、シーナリーはどの程度まで作れるのか、など計画の段階で慎重に
考証することが必要でした。製作は週末のみで、駅構内部分の製作にほぼ4年、その後、組立て式の駅構内部分と、
フレキシブルレールを貼った木製道床をつなぎ合わせてエンドレスにして運転を楽しんでいました。
2001年の年明け早々、NJがクラブとしてJAMの夏季コンベンションにレイアウトを出品することになり、
急遽駅構内部分以外の製作を開始しました。その年のコンベンションは台枠の上に道床を作り、
フレキシブルレールを貼っただけというみっともない格好で出品しましたが、翌2002年のコンベンション時
には未彩色ながら一応シーナリーの地形部分が完成し、今日現在やっと90%の完成に至ったところです。
前述の如くこのレイアウトでは13mmゲージを採用しました。ご存知のとおり13mmゲージは、J
Rの在来線が採用している軌間1067mmを車輌の縮尺の1/80とし、実物の狭軌感を出すことに主眼を置いています。
組立て式レイアウトでは一般的には走行性能や線路の保守の問題等で、16番(16.5mm)を採用することが
望ましいのですが、このレイアウトの計画時点で既にかなりの車輌を13mmに改軌していたこと、
シーナリーつきレイアウトにおける狭軌の線路の華奢な感じを再現したかったこと、
基本的なフレキシブルレールやポイントが発売されていたこと等により13mmを採用することとしました。
走行性能の問題については、線路の工作時に精度を上げることにより解決しました。
製作は1988年の計画からすでに16年経過しているにも拘わらず、途中製作のブランク期間が長く、
まだ完成に至っておりませんが、今回多少なりともお役に立つことがあるかと思い、
製作記を書くことに致しました。(2004年9月 M.F)