羽後交通 雄勝線 −冬の印象−
昭和45年12月



 我が鉄研の冬合宿は花輪線で行うのが伝統であった。竜ケ森の信号所構内に 置かれたオハ31のヒュッテで寝起きし8620の奮闘を撮影したのだが、夜間交換 する8620の息づかいをオハ31の簡易ベッドの中で聞くことができたのは一生の 思い出である。
 合宿解散後、五能線の混合列車を撮し、帰りに羽後交通雄勝線に立ち寄った。
 凍てつく中での撮影が続き、愛機キャノンFTbもシャッターの調子が悪く、 懐で暖めながらの撮影になった。折からの吹雪で走行写真はほとんど撮すこと ができなかったが、ポール集電の電車、木造の小型客車、旧国鉄の木造ボギー 客車、マッチ箱客車などを見ることができて収穫の多い旅であった。
 中でも木造の客車たちはオリジナルの姿を良く留め、手入れも行きとどいて 素晴らしいものであった。後に3両の2軸客車が明治村に動態保存され現在も その姿を見ることができるのは、羽後交通での環境が良かったおかげであろう。

ポール姿も凛々しく
ポール姿も凛々しく
デハ6とホハニ2
デハ6とホハニ2
ホハフ2とホハニ2
元国鉄木造ボギー車 ホハフ2とホハニ2
走行写真 西馬音内〜あぐりこ
唯一の走行写真 西馬音内〜あぐりこ

旧国鉄ナハフ14106のホハフ2と、同じくナハフ14404のホハニ2。 湯沢駅に留置されていたところを見ると朝夕の列車に使われていたのだろう。 木造ダブルルーフで水雷型ベンチレーターの17m客車が現役でいたなんて 奇跡的でさえある。雪のない時期にしっかりと写真を撮っておきたかった・・・


右の2軸客車はハフ13
右の2軸客車はハフ13
オープンデッキ・ハフ13
美しき木造オープンデッキ・ハフ13
ロータリー車ユキ3と
ロータリー車ユキ3と


写真のハフ13(新宮鉄道の自社工場製)を始め、同僚のハフ14、元青森鉄道のハフ11 は当鉄道廃止後明治村へ運ばれ、現在も蒸機に牽かれて幸せな余生を送っている。


古豪、デハ3
生え抜きの古豪、デハ3。
飛び出た煙突は冬季限定
飛び出た煙突は冬季限定
ハフ13のデッキ越しに
ハフ13のデッキ越しに

木造、単車、ダブルルーフ、ポール集電、楕円形の戸袋窓、窓から飛び出た煙突。 こんなのが除雪用とはいえ現役だった。


乗客の姿がいかにも雪国らしい
乗客の姿がいかにも雪国らしい
孫の所へ行くお婆さん
東京の孫の所へ行くと言っていたお婆さん
西馬音内のホーム
西馬音内のホームは車庫と隣接していた


当時の鉄研の部誌に数枚の写真を載せたところ、これを見たメンバーのMが気動車化されてからの雄勝線を訪問し、 その写真を「とれいん」のイマジネーションフォトコンテストに応募したところ、見事に入選。 賞品のC62(EF58だったかもしれない)の模型をせしめたので、羨ましくも悔しい思いを密かに抱いたことを思い出す。