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クキ1000-1   平成5年11月5日 横浜本牧駅


 昔から社会の変化が鉄道事業者に影響を与えることがありました。 それもどちらかと言えば、旅客輸送よりも貨物輸送に影響が出やすいように思います。 かつてどこの路線でも見ることが出来た石油類の輸送もそんな1つなんですね。
 石油精製工場は原料が海外から船で運ばれますので臨海部に立地しています。 内陸部への供給には油槽所と言われる中継点を設け、 その中継点までの輸送をもっぱら鉄道が担ってきました。 道路事情が良くなってくると工場からユーザーへ直送する範囲が広がり、 油槽所の廃止という物流の合理化が進んでゆきます。 大手私鉄最後の貨物輸送だった東武鉄道の石油輸送も 「儲かる」「儲からない」の話ということよりも、 油槽所の廃止が貨車輸送に幕を引くことになりました。
 さて、景気がよくなると今度はトラックの運転手が不足し、 ユーザー直送のタンクローリーを鉄道で運んで採算が合うということに。 そんな背景で生まれたのがクキ1000形です。
 国鉄時代の昭和60年からタンクローリーのピギーパック輸送の研究が開始され、 チキ6000形による試験、コキ1000形を改造したクキ900形を経て、 クキ1000形は平成3年から4年にかけて20両が製造されました。 平台枠上にタンクローリーを積載しても車両限界はクリアできるものの、 重心が高くて高速運転が出来ないことから、 タイヤが載る側梁を弓型とした独特の形態となりました。
 台車はFT1-1、ブレーキはCL応荷重装置付空気ブレーキ、 手ブレーキは特殊なラチェット構造が採用されています。 塗色は車体が青紫色、台車と下回りが灰色1号です。
 タンクローリーの積み込み、取り降ろしには、 タイヤホイールとキングピン付近の車体でタンクローリーを支える専用のリーチスタッカが用意されました。 運行開始直後は、慣れないリーチスタッカ、慣れない積荷の取扱に苦労していたようです。 神奈川臨海の横浜本牧を拠点とし新座貨物ターミナル・越谷貨物ターミナル間を18両編成で結び、 新たな輸送形態を実現したものつかの間、 バブル崩壊はトラック輸送運賃の値下げをもたらし、あっけなく敗北。 平成8年には運行を終了し、解体されてしまいました。 (2015年12月 H・T)


クキ1000-18   積荷がないとわかりづらいので積車をご覧ください。 平成5年4月2日 高島(信)