この天賞堂製のBIG BOYは2018年に展示台とともにある方から譲っていただいたものです。
天賞堂ブラスモデルの黄金時代の製品で展示台も天賞堂に製作を依頼したそうです
(展示台の方が高価だったと伺いました)。
ただ 2011年の東日本大震災で転倒破損した経緯があったため全車輪が展示台の線路にエポキシで固定されていました。
しばらくはそのままの状態で飾っていましたが2021年春頃に走るようにしたいと思い
エポキシの固定を外し車体もばらしてみました。
このモデルは棒形モーターの回転を後部シリンダー部に取り付けたギアボックスのスパーギアで下に落として
前後のフレームの動輪に取り付けたギアボックスに伝える構造になっていました。
しかしゴムジョイントは経年劣化でボロボロになっていたのでモーターと前部フレームのジョイントは
だるま屋のユニバーサルジョイントに交換し後部フレームはスペースがないためシリコン製のジョイントで繋ぎました。
前部フレームのギアボックスは固定されていないので動輪の回転と反対方向に回ってしまうため
ユニバーサルジョイントで繋ぐために前後に0.2mmの鉄板から切り出した押え板を取り付けました。
ここまで手を加えたところで欲が出てせっかくBIG BOYを走るようにするなら
長い貨物列車をひかせてみたいと思うようになりました。
そこでまず重量列車牽引を想定し写真では反時計方向の回転トルクがかかるギアボックスの後ろ側に
後部フレームにも0.2mmの鉄板で押え板を作り取り付けました
(バック運転では大したトルクは掛からないと思うので前方はシリコンチューブに負担させました)。
次に上廻りの補重を考えました。ボイラー内のウエイトは小さめだったので
鉛板を切って貼り重ねて後方に伸ばし重さを2倍以上にしました。
さらに火室部の隙間にも切った鉛板を貼り付けました。これでかなりの重量になりました。
これで上廻りの重量が増加し前方も重くなったため前部フレームへ重量をかけるバネを改造しました。
オリジナルのバネは写真後方に置いてある様に第三動輪付近に重量が掛かるようになっていましたが
向きを逆にした強めのバネを燐青銅板で作り第二動輪付近に重量が掛かるように改造し
前部フレームの動輪の粘着力を強化しました。
ただこれにより上廻りとバネの摺動距離が長くなりさらに掛かる重量も増加するのでスムースに動くよう
上廻りと触れる部分にミニチュアベアリングを取り付けました。
右の写真で荷重を受ける摺動部分が前方に移動したのが解ると思います。
あとPFMサウンドシステムを組み込む予定だったので前部フレームの第二動輪と
後部フレームの第三動輪にさかつうのはめ込み式コンタクトを取り付けました
(前後の動輪は同期しているのでどちらか一つでも良かったかも知れません)。
生憎コンタクトは手持ちが1つしかなく現在殆ど入手困難となっていて、
いろいろ問い合わせましたが在庫している店はなかなか見つかりませんでした。
ダメ元で以前からお世話になっている、いさみやに電話してみたところ
「確か何個か残っていたはずなので捜しておくから夕方ぐらいに来てみてください」と言われました。
夕方に伺ってみるといくつか見つかったとのことで3個ばかり分売していただきました
(歴史のある模型店はこういうところが魅力ですね)。
またプラ製のブレーキシューも破損したものがあったので天賞堂で新しいものを分売して頂き交換しました。
上廻りのヘッドライトはM.V.PRODUCTSの反射鏡付き4.2mmのレンズライトを入れ、電球色発光ダイオードを定電流ダイオード、
ツェナーダイオード、マイクロインダクタ(高周波遮断用)を直列につなげて配線しました。
PFMのフィルターはコイルとコンデンサが並列になっていますがこれは高周波だけをカットして
スピーカーへの音の信号を通すためのものだと思っていましたのでライトのフィルターであれば
マイクロインダクタで良いかと考えました。
SL1でテストしたときは問題なかったのですがPFMのコントローラーを使うと常に一定の雑音が出てしまいます。
麦粒球に変えると良くなるというお話しも聞きましたがどうするかは今後の課題としたいと思います。
テンダーはPFMサウンドシステムを搭載するため床板を外し手持ちのスピーカーとスピーカー用のフィルターを搭載しました。
スピーカーは大型のもの(16番の日本型蒸機にはとても入らない大きさです)を少し削って取り付けました。
スピーカーの取り付けはエンクロージャーの機能を持たせるためスピーカーの上部は
プラ板とホットボンドで遮蔽して独立した空間としました。
プラ板は厚めのものを使用し床板と接する部分の中心に1mmのネジ穴を空けて床板をネジで留めることで密着性を高めました。
床板はスピーカーのコーンの部分を大きめに切り抜きましたがTenshodoのエッチングのロゴマークを残したかったので
下の写真のようにコーン全体の半分ほどのスペースになりましたがこれでかなり大きな音が出るようになりました。
この時点ではオリジナルのモーターを使うつもりだったので消費電流が多いことを想定して
テンダーの車輪に集電用のブラシを取り付けました。
写真のようにプリント基板に燐青銅板から切り出したブラシを
テンダーの固定されている5軸の車輪踏面に触れるように取り付けました。
写真は絶縁側のものでフレームに固定するネジが基盤の表面に触れないように表面を皿モミして留めてあります。
非絶縁側は基板表面とネジが触れるように穴をあけただけで固定しました。
後述するようにその後コアレスモーターに装換することになりましたがブラシは外さずにそのままにしてあります。
改造に着手してからここまで半年近く掛かってしまいましたが
900RのSカーブがある自宅のテスト用線路を快調に走行しサウンドシステムも機能することが確認できました。
ここまでできると次にウェザリングを考えるようになりました。
そこで当会運転会の常連でお付き合いのある松本謙一氏に2021年秋に調整とフィニッシュ(松謙フィニッシュ)を
お願いしました。
その際モーターはコアレスにした方が良いとアドバイスされたのでモーターの交換もお願いしました。
2022年の2月に作業が完了したとの連絡を頂き2月20日に受け取りに伺いました。
そのときに無理を言ってD&GRNを走らせて頂きました。仕立てて頂いた現車39両の貨物列車を牽引して20‰、
最急曲線860mmの峠を空転することもなく無事に超えることが出来ました。
これでBIG BOYにふさわしい重量列車を牽引できるようにしたいという所期の目標は達成されました。
(2022年8月 S.N)
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