玉電最後の日(1969年5月10日)



 その日は確か土曜日だったと思う。まだ、学校に通っていた私は授業が終わってから 二子玉川に向かった。二子玉川の駅は最後の玉電を見ようと集まった人でごった 返していた。ほどなく花電車がやってきた。最終日の雰囲気を盛り上げるために 花電車が運転されているらしい。
 二子玉川で花電車を見送ったあと、世田谷線の分岐点・三軒茶屋へ向かって歩き はじめた。沿線では玉電最後の姿を残すため、鉄道ファン以外にも多くの人が カメラを向けていた。電車は上りも下りも超満員。写真を撮りながら三軒茶屋に ついた頃には夕方のラッシュがはじまり道路は渋滞しはじめていた。
二子玉川に到着した花電車
専用線区間を走る玉電 どの電車も超満員 渋滞に巻き込まれた玉電
世田谷線との合流地点を走る花電車
 夕闇がせまる頃、渋滞で遅れた花電車がやってきた。沿道には花電車を一目見ようと たくさんの人が集まっていた。多くの人に見送られて最後の花電車は渋谷へ向かって 走り去っていった。
 その日から30年以上たった今、沿線の二子玉川、用賀、三軒茶屋など街の風景は 大きく変わってしまった。近代的な町並みを見るたび思い出す懐かしい1日である。